もっとも手軽な火の起こし方はライターを使う方法ですが、「味気ない」「キャンプ感が台無し」と思う方も多いのではないでしょうか。
スマートかつキャンプならではの雰囲気を楽しめるアイテムが、ファイヤースターターです。
この記事では、ファイヤースターターの使い方と、購入時の選び方をおすすめ商品とともに紹介します。
ファイヤースターターとは
ファイヤースターターとは、キャンプで焚火をするときなどに使用する火起こし道具のことです。
メタルマッチとも呼ばれており、棒状の「ロッド」と板状の「ストライカー」を使用して火を起こします。
ファイヤースターターの原理は火打石と同じで、ロッドとストライカーを擦り合わせたときに飛んだ火花で火を起こします。
キャンプでファイヤースターターを使用するメリット
ファイヤースターターをキャンプに持参すると、本格的なアウトドア気分を味わえるだけではありません。燃料を使用しないことも、キャンプ向きのメリットです。
燃料用の荷物を別に持ち込む必要がなく、バッテリーの劣化とも無縁なので長期的に愛用できます。
荷物量を抑えられる点は従来のマッチも同じですが、湿気で駄目になることもあり、シーンを問わず使えるとはいえません。
一方、ファイヤースターターなら本体がそもそも金属でできているので、湿気って使い物にならなくなる心配がありません。
仮に水浸しになることがあっても、タオルで軽く拭けばすぐに使用できます。
消耗品といいつつも、ほとんどの商品が1万回前後使えるほど長寿命です。
ファイヤースターターの基本的な使い方
ファイヤースターターには、さまざまな種類があり、どのタイプを購入しても基本的な使い方は同じです。
ここでは、ファイヤースターターの使い方を5つのステップで紹介します。
1.火口を用意する
火口(ほくち)とは、ファイヤースターターで飛ばした火の粉で火を点けるためのアイテムです。
薪に火をつけるために使うだけの消耗品なので、乾いた燃えやすいものなら何でも良いとされています。
手軽に用意できる火口は、たとえばティッシュ、枯葉、麻紐などです。
ブッシュクラフトが好きな方は、フェザースティックを作るところから始めても良いでしょう。
麻紐を使うときは、カットした状態で使用するのではなく、火がつきやすくなるように紐を解しておきます。
火口に使うなら、麻紐なら5cmくらい、ティッシュなら3枚くらいで十分です。
フェザースティック用の薪を購入したりキャンプ場で拾って用意したりするときは、脂が多く火がつきやすい針葉樹がおすすめです。
2.ロッドの粉を火口にかける
火をつける前準備として、ロッドの表面をストライカーで削って、金属粉を火口にかけます。
ロッドの表面を削る理由は、主に下記の2つです。
・金属粉を火口にかけて火をつきやすくする
・ロッド表面のコーティングや錆を落として火花を出しやすくする
どちらも、火をつきやすくするために大事な作業です。
金属粉をかけなくても、火はつきます。
ただし金属粉が火口にかかっているほうが、火花が大きくなってつきやすくなるメリットがあります。
3.ロッドの先を火口に当てる
ロッドの先端部分を火口に当てておくと、狙った場所に火花を散らせます。
ロッドの先を当てるときは、火口に対して垂直または若干斜めに当てることがポイントです。
必ずしも火口にロッドを当てる必要はありませんが、初心者は火をつきやすくするために当てることをおすすめします。
4.ストライカーなどで火花を飛ばす
ストライカーでロッドの表面を擦り、火口に火花を飛ばしましょう。
火花を上手に飛ばすコツは、下記の4つです。
・ストライカーを走らせる距離を長めにとる
・確実に火花を飛ばすことを意識する
・ロッドだけを動かす
・同じ動作を火がつくまで繰り返す
ストライカーがロッドを削る距離が長くなるほど、着火しやすくなります。
手前で何度も往復させるのではなく、端から端までストライカーを走らせて、1回に削る距離を長くとりましょう。
最初はゆっくりでも良いので、火花をしっかりと火口へ飛ばすことを意識してください。
また、連続してストロークしたほうが火花が飛びやすくなるため、1回削って休むのではなく、何度か繰り返してみることが大切です。
5.火を育てる
火の粉がついた火口に、フェザースティックなど燃えやすいものを足して、少しずつ火が大きくなるように育てていきます。
焦って最初から薪をかぶせると、火が消える可能性があるので注意しましょう。
火が完全についたら、太い薪を加えて安定させます。
ファイヤースターターで火がつかないときの対処法
基本的な動作を繰り返しても、どうしてもファイヤースターターで火がつかないときは、対処法を試してみましょう。
主な対処法は、次の5つです。
薪割り台の上など作業しやすい場所で行う
焚火台の上などは手元が安定しにくいので、初心者は火起こしが難しく感じます。
薪割り台(丸太)の上なら、手元が安定してファイヤースターターを操作しやすくなります。
薪割り台でなくても、平らで作業しやすい安全な(引火の心配がない)場所なら、どこでも構いません。
火が付いた後は、火バサミなどで火口を焚火台に移します。
金属粉を多めにかけておく
準備段階の、ロッドを削って金属粉を火口にかけるとき、多めに粉を出しましょう。
金属粉が多いと火の粉が大きくなるので、火がつきやすくなります。
道具を変えてみる
ファイヤースターターのロッドは、主にフェロセリウム製とマグネシウム製の2種類です。
それぞれ特徴が違うので、火がつかないときは別の素材のロッドに交換してみるのもおすすめです。
ストライカーも、必ずしも付属のものにこだわる必要はありません。
商品によっては小さくて持ちにくいものもあれば、握りやすい形状に加工されているものもあります。
付属のストライカーが扱いにくいと感じたら、自分が使いやすいものに変えてみましょう。
慣れた人ならナイフの背を使うこともありますが、ナイフが傷つきやすいので、替刃のノコギリの背を使うのがおすすめです。
ロッドを火口に近付ける
ロッドの先端を火口から離している人は、近付けたり当てたりして距離を縮めます。
距離があると、火花が火口に届く前に消えてしまい、なかなか火がつきません。
短い距離でも風で消えることもあるので、つかないときはロッドの先を火口に当ててから擦ってみてください。
火口の種類を増やす
麻紐だけ、ティッシュだけなど単独で使用していて火がつかないときは、火口の種類を増やすことも対策法のひとつです。
火口の種類が多いと、火がつきやすくなったり火持ちが良くなったりすることがあります。
たとえば、麻紐に細かく折った小枝や割りばしを混ぜると、火が安定しやすくなります。
麻紐などの火口のほか、ワセリンなど油分を含ませたコットンも効果的です。
ファイヤースターターの選び方と購入時の注意点
ファイヤースターターは使い方だけではなく、どれを購入するかも重要です。
最適なものを選べば、初心者でも火起こししやすくなります。
ここではファイヤースターターの選び方や、購入するときの注意点を紹介します。
ロッドの素材で選ぶ
ロッドの素材は、一般的に「フェロセリウム」と「マグネシウム」の2種類です。
フェロセリウム | 鉄とセリウムの合金 |
マグネシウム | マグネシウム合金 |
フェロセリウムは発火温度が低いので、軽い力でも火花が発生しやすいのが特徴です。
初心者でも火起こししやすいメリットがある一方、高価格の商品が多いことがネックです。
とはいえ、何度も繰り返し使えることを考えると、大きなデメリットともいえません。
マグネシウムは安く、手軽に購入できるのがメリットです。
百均で販売されているファイヤースターターは、大抵マグネシウム製です。
安価な分、発火温度が高いので、初心者は火花を出しにくいデメリットがあります。
ロッドやストライカーの長さで選ぶ
ファイヤースターターのロッドやストライカーは、長さも商品ごとに異なります。
ロッド
一般的なロッドの長さは、5~10cm程度です。
ロッドの長さは、火起こしの難易度や持ち運びやすさを左右する重要な要素といえます。
ロッドの長さを選ぶときの注意点は、「長すぎないものを買う」ことです。
ストローク距離を長くとると火花が出しやすくなりますが、長すぎるとストライカーが擦りにくくなる場合もあります。
短すぎてもストライカーを擦る距離が短くなり、火起こしの難易度があがるので、ちょうど良いサイズを選ぶことが重要です。
自分の手に合ったロッドのサイズが分からないときは、平均的な6~7cm程度から試してみましょう。
ストライカー
ストライカーの長さも、使い勝手に大きく影響します。
コンパクトタイプのファイヤースターターを購入すると、ストライカーが短めに作られていることもあります。
持ち運びしやすい反面、短すぎると握りにくいので、自分の手に合ったサイズを選ぶことがポイントです。
一般的には、5~6cm程度あると握りやすいといえます。
初心者は7cm以上あると、火花と手の距離ができるので火起こししやすくなります。
より安定して握りやすくなるグリップつきもあるので、しっかり持ちたい方は検討してみてはいかがでしょうか。
ロッドの太さで選ぶ
ロッドの太さも、商品によってさまざまです。
一般的なロッドの太さは、5mm~10mmです。
太いほうが削りやすく、金属粉を削れる量が多いので、長持ちします。
長く愛用したいなら、8mm以上のロッドがおすすめです。
その他の要素で選ぶ
ロッドとストライカーが紐などでつながっているタイプは、携帯性の良さが魅力です。
グリップの形状もアイテムごとに異なるので、握りやすさで選ぶのもおすすめです。
ほかにも、下記の機能がついたファイヤースターターもあります。
・フェロセリウム:鉄とセリウムの合金
・マグネシウム:マグネシウム合金
・栓抜き
・ホイッスル
・レンチ
・カラビナ
・キーホルダー
・火吹き棒
バックパックキャンプなど、荷物を最小限に抑えたい場合は、付属品や機能の多いファイヤースターターも選択肢に加えてみましょう。
初心者におすすめのファイヤースターター
ファイヤースターターはデザインや使い勝手の良さも含めると、多くの選択肢があります。
「どれを選べば良いか分からない」と悩んでいる方へ、初心者でも扱いやすいファイヤースターターを4つ紹介します。
野良道具製作所 野良スティック~竹~mini

メーカー・ブランド | 野良道具製作所 |
ロッドの素材 | フェロセリウム |
ロッドのサイズ | 全長120mm×直径10mm |
ストライカーのサイズ | 非開示 |
広島県の株式会社ノラクリエイト(野良道具製作所)が手がける、高級感と使いやすさが魅力のファイヤースターターです。
商品名のとおり、真鍮製のハンドル部分は竹をモチーフとしたデザインで握りやすく、ストライカーを強く擦りつけてもロッドごと持って行かれる心配がありません。
ハンドルの凹凸が使いにくいと思った場合は、別売りでストレートタイプの着せ替えハンドルを購入すれば、自分で付け替えられます。
真鍮のほか、銅やチタンのハンドルも販売されています。
また、ファイヤスターター本体もスペアパーツとして個別販売されているので、良い味わいに馴染んだハンドルはそのままに、すり減った本体のみを交換して長く愛用することもできます。
NHAM (ニャム) 極太 ファイヤースターター

メーカー・ブランド | NHAM outdoor |
ロッドの素材 | フェロセリウム |
ロッドのサイズ | 全長98mm×直径10mm |
ストライカーのサイズ | 非開示 |
日本企業が「スタイリッシュで機能的なキャンプ用品」のひとつとして、火付けのしやすさを追求して開発したファイヤースターターです。
木製のグリップで握りやすく、ナチュラルでおしゃれな見た目に仕上がっています。
革紐つきなので、ストライカーをなくす心配がありません。
ストライカーのサイズは公表されていませんが、写真を見る限り長め&削りやすさを重視した形状といえます。
Bush Craft(ブッシュクラフト) オリジナル ファイヤースチール2.0

メーカー・ブランド | Bush Craft |
ロッドの素材 | フェロセリウム |
ロッドのサイズ | 全長約60mm×直径9.5㎜ |
ストライカーのサイズ | 非開示 |
オリジナルのキャンプ用品を開発している日本メーカーによる、携行性の高いファイヤースターターです。
ストライカーに革製のリングが付属しているので、ロッドとひとまとめに収納できます。
また、上記のレザーリングとは別に持ち運び用のコードもついており、荷物をコンパクトにまとめたいソロキャンプに向いています。
コードは切って着火剤としても使用可能なので、現地で適当な枯葉や枝が見つからなかったときも難なく火起こしできます。
sun’s hill(サンズヒル) ファイヤースターター

メーカー・ブランド | sun’s hill |
ロッドの素材 | マグネシウム |
ロッドのサイズ | 全長70mm×直径非開示 |
ストライカーのサイズ | 非開示 |
4つ目の商品も、日本メーカーによるファイヤースターターです。
特徴的なのは、火吹き棒とホイッスルがセットになっていることで、ほかにもコード、カラビナ、収納袋がついています。
削りやすい形状のストライカーは、ビンの栓抜きとしても使えます。
火つけにテクニックがいるマグネシウム製ですが、付属する機能が多く、荷物を減らしたい方におすすめです。
まとめ
ファイヤースターターは、キャンプで火起こしするときに役立つアイテムです。
燃料を必要としないだけではなく、付属機能の多いタイプを選べば、ほかの荷物を減らせるメリットもあります。
最初は火起こしに時間がかかるかもしれませんが、本格的なキャンプを楽しむのであれば、1本はもっておきたいアイテムです。
初心者の方は、まず火起こししやすいフェロセリウム製のファイヤースターターから試してみましょう。