暖かい季節のキャンプとは違う魅力の詰まった冬キャンプ。
その魅力に惹かれて冬キャンプをするキャンプユーザーも増えてきました。
ですが寒い季節のキャンプには気を付けなければならないことも沢山あります。
今回はそんな冬キャンプを安全に楽しむための方法とギアの選び方を解説します。
冬キャンプは準備不足で起こるトラブルに注意
山深いキャンプ場ならマイナス10度まで冷え込むことも珍しくない冬キャンプ。
命に関わるトラブルも多く、いつものキャンプより準備が大事になります。
誤った寒さ対策や準備不足で思いもよらないトラブルが生じることもめずらしくありません。
寒さ対策が足りないままシュラフで眠ると低体温症になることもあります。
暖を取るため使用した火器で一酸化炭素中毒になり亡くなるというニュースも聞こえてきます。
寒さへの備えをしたつもりが、間違った知識で行うと更なる危険を生む場合もあります。
正しい準備をするために、冬キャンプに潜むリスクをしっかりと理解しましょう。
寒さによる低体温症のリスク
寒さが原因で起こる最も直接的なトラブルが低体温症です。
低体温症とは深部体温が35度以下に下がっている状態のことで、28度まで下がった場合の死亡率は40%にも達します。
冬キャンプでは気温に合った寒さ対策が出来ていない時と寝具の防寒性が低い時などに低体温症になる可能性があります。
気温がそれほど低くない状態でも、濡れたまま過ごしたり風に熱を奪われることで低体温症になる場合も。
体温を上げるためのカロリーが不足していると悪化しやすい傾向が見られます。
冷たい物に触れ続けていると凍傷を引き起こします。特に手や足の指先は悪化すると組織が壊死してしまう危険性もあります。
濡れた手袋や靴下を変えずにいるとそのリスクはさらに高まります。
誤った火器の使用による火事
テントの中で何かを燃焼させると2種類のリスクが発生します。
ひとつはテントなどへの延焼による火災、もうひとつは一酸化炭素中毒による事故です。
寒さに耐えかねて正しい知識がないままテント内で火を使うと命に直結する事態になります。
テントの素材には色々な種類がありますが基本的に布で作られています。
難燃性の素材を使ったテントであっても難燃であって不燃ではありません。
さらに化学繊維で作られたシュラフやダウンシュラフ、ダウンウェアなどは簡単に燃え移ります。
どのような火器であっても燃え移る可能性があります。
テント内で使って絶対に安全と言える火器はありません。
燃料に対する知識不足は火災リスクを増加させます。
火器の近くにガス缶を置いておくと熱されて爆発する危険性がありますし、灯油やパラフィンオイルを使用するランタンなどにホワイトガソリンを入れて爆発させてしまうこともあります。
火を燃焼させると必ず一酸化炭素を生み出します。
テント内の換気が不十分な状態だと一酸化炭素の濃度が上がり一酸化炭素中毒を引き起こします。
軽度だと頭痛や吐き気などの症状が出てきます。
そのまま重度の症状を引き起こすと失神などの意識消失状態になる危険性があります。
意識を失ってしまうと一酸化炭素を吸い続けてしまうのでそのまま死亡してしまいます。
火器の使用で起きる事故は決して火災だけではないのです。
テント内の寒さ対策ポイント5つを紹介
テントの外では焚き火をするなど、状況に合わせて暖を取る方法がいくつかあります。
ですがテント内で寝る時には火の管理などはできないので事前に準備した睡眠環境が重要になってきます。
ここではテント内での睡眠環境を上げる寒さ対策を解説します。
スカートつきのテント
冬キャンプでまず大事になるのはテント選びです。
テントの機能によってキャンプの快適性に大きく差が出て来ます。
暖かいシーズンに使うテントは涼しく過ごすため通気性を重視したものが多いです。
ですが寒いシーズンに通気性が高いテントを使うと睡眠中に吹き込んでくる風で体温を奪われます。
外気の影響を受けにくくするには、風の吹き込みを軽減するスカートつきのテントがおすすめです。
スカートつきのテントならテント内の暖気も逃がしにくいので快適に過ごせます。
冬はテントの中と外の温度差が大きいため結露しやすいので、透湿性の低い素材のテントだとテント内が水浸しになりがちです。
スカートつきのテントだとさらに寒暖差が大きくなるので結露への対策が必要になります。
ポリコットン素材やコットン素材のスカートつきテントを使うことでテント内の結露を軽減できます。
スカート部をロールアップできるテントもあるので通気性を確保したい夏のキャンプでも快適に過ごせます。
雨が入り込みにくくなるメリットもあるのでオールシーズン使えます。
底冷え防止のマット
シュラフの下に敷くマットは季節問わず使用するアイテムですが、冬キャンプでは防寒性に優れたものを選びましょう。
暖かいダウンシュラフを使っても、シュラフは構造上自分の体重がかかっている部分のダウンがつぶれてしまいます。
ダウンは空気の層を作ることで熱を閉じ込める性質を持っているのでそのままでは地面の冷たさに熱を奪われてしまいます。
アルミ蒸着されたフォームマットを使えば自分の体温を反射してくれるので寒さは軽減されます。
加えて厚みのあるインフレーターマットや高さのあるコットを使用することでさらに熱を奪われにくくなります。
インフレーターマットを選ぶ時には「R値(熱抵抗値)」の高いマットを選ぶのがポイントです。
「R値」の高いインフレーターマットを使うと地面の冷たさをより遮断してくれます。
一般的にR値5.0以上は厳冬期対応とされていますが、メーカーによって基準が異なる場合があるので注意が必要です。
極寒の環境であればテントを設置する前にブルーシート・銀マット・グランドシートの順に敷いておくとさらに底冷えを防止できます。
銀マットなどアルミ蒸着されたマットは銀色の面を自分に向けて設置しましょう。
そうすると自分の熱を反射して暖かさが増します。
素材にこだわった冬用のシュラフ(寝袋)
冬キャンプに使うのなら必ず冬用のシュラフを用意しましょう。
「3シーズン用」シュラフとの最大の違いは断熱性や保温性にあります。
厳冬期のキャンプではシュラフの性能が睡眠の質を圧倒的に左右します。
「3シーズン用」とされているシュラフは原則的に冬季使用は控えてください。
シュラフには主に化繊(化学繊維)を使用したものとダウン(羽毛)を使用したものがあります。
代表的な特徴として化繊は濡れに強く、ダウンは保温性に優れています。
冬キャンプには保温性の高いダウンタイプをおすすめします。
シュラフは大きく分けて封筒型とマミー型がありますが、フィット感や保温性を考えるとマミー型がおすすめです。
マイナス気温の中でのキャンプではシュラフが密着しているかどうかが快適性に大きく影響を与えます。
封筒型だと開口部が広く熱を奪われがちですが、マミー型は密着感が高く熱を逃がしにくくなっています。
マミー型は体格によってフィット感が変わるので、試させてくれる店舗で購入することをおすすめします。
注意点としてシュラフにはコンフォート温度(快適温度)とリミット温度(限界温度)が設定されています。
購入時には自分が使用する温度にあわせて選ぶ必要があります。
リミット温度はコンフォート温度より低く設定されていますが、リミット温度とはその気温で使っても数時間寒さを感じながらも命を維持できる温度が表記されています。
なのでリミット温度を基準にすると快適に寝れないと考えてください。
メーカーごとに基準が違う場合もあるので注意が必要です。
冬キャンプではシュラフにもレイヤード(重ね着)の考え方があり、結露に弱いダウンシュラフを守るための防水シュラフカバー、保温性を上げるためのインナーシュラフがあります。
シュラフカバーやインナーシュラフを別途用意しておくと特別冷え込んだ時の備えにできます。
服装での寒さ対策も行おう
テントの中でも外でも共通して体温を守ってくれるのが服です。
冬キャン用のキャンプギアを揃えての寒さ対策だけではなく服装での対策も大事になります。
ですがレイヤード(重ね着)の方法ひとつで防寒着の性能を発揮できないこともあります。
レイヤードは主にベースレイヤー(肌着)・ミドルレイヤー(中間着)・アウター(上着)の三層にわかれます。
ベースレイヤーは吸汗性や速乾性を重視しつつ、場合によっては発熱作用のあるインナーをおすすめします。
冬用のインナーには綿やポリエステルだけではなくメリノウール・オクタなどさらに快適な特殊素材を用いた物が多くあります。
直接肌に当たる衣服がインナーなので性能の違いが暖かさに直結します。
選ぶ時には自分の汗の量なども考慮した上で吸水性と速乾性、発熱性の違いをチェックしましょう。
何かのトラブルで大きく濡れてしまうと危険なので必ずインナー類は予備を持っていきましょう。
ミドルレイヤーは通気性と保温性を重視しつつ、上から重ね着しても邪魔にならない物を選びましょう。防水性の低いダウンジャケットやフリースなどがこれに該当します。
屋外活動の際はほぼ確実にアウターを着ているので、暑さを感じて汗ばむ場合はミドルレイヤーの着脱でレイヤードを調整することになります。
ですのでミドルレイヤーも予備を持ち込むとミドルレイヤーを増やすことで体温調節がしやすくなります。
アウターを選ぶ際に必要になる性能は雨風をしのげる防水性と風を通さない耐風性です。
登山などの運動強度の高い活動をする場合は透湿性も重要になりますが、キャンプでは特に防水性が必要になります。
雨具として機能するほどであれば天候が崩れた際も安心です。
マイナス気温で活動する時に風を受け流すことができる防風性は大きな利点になります。
首元をしっかりとカバーできて袖から空気が入ってこない構造の物を選ぶようにしましょう。
小物を上手に使いこなすことが大事
冬キャンプを快適かつ安全に過ごす上で力になってくれる防寒小物も沢山あります。
使い捨てカイロをミドルレイヤーのポケットにいれておくと、肌と離れていて安全ですしアウターのおかげで熱も奪われません。
寝る1時間前にシュラフの足元、腰部に使い捨てカイロを仕込んでおくとシュラフに入った時の寒さはかなり軽減されます。
湯たんぽを入れておくとさらに暖かく過ごせます。
寝袋の中では足先に寒さを感じやすいので厚手の靴下やテントシューズを装着するのもよいです。
顔や首回りはシュラフ構造によっては風があたり強い冷えを感じるのでバラクラバ(目出しマスク)やネックウォーマーを活用するのもよいでしょう。
電源ありのサイトなら電気毛布やホットカーペットの活用もおすすめです。
電源からの距離も考えて延長コードをもっていきましょう。
急な雨での漏電事故などもありますので、必ず屋外用の延長コードを用意しましょう。
ここまでの備えをしても寒くて寝れないこともありえます。
エマージェンシーシートや銀シートを最終的な備えに用意しておくと万が一の事故にも備えることが出来ます。
寝ている間に靴が凍りついてしまい、靴下を濡らす危険性もあります。
寝る前には靴をビニール袋にいれておくだけで、凍結によるリスクを軽減できますのでビニール袋を複数用意しておきましょう。
撤収時もマイナス気温が続くようなら氷の粒ごとテントなどを撤収する可能性もあります。
その場合、パッキングして帰宅する最中に氷が溶け始めて帰るころには水浸しになることもめずらしくありません。
このように撤収時に凍り付いたアイテムをパッキングするときにもビニール袋は活用できます。
冬キャンプにおける寒さ対策の注意点
ここまで解説してきたように間違った寒さ対策は危険な事故を引き起こす可能性があります。
安全にキャンプを楽しむために寒さ対策の注意点を紹介します。
カイロは低温火傷に注意しよう
カイロ使用時は、低温火傷を起こさないように使うことが大切です。
USB充電などの電気カイロも低温火傷のリスクはあるので、カバーなどを活用しましょう。
ズボンのポケットにいれているだけでも低温火傷になるリスクがあります。
肌やインナーに直接触れるようなところに入れたり張ったりせずミドルレイヤーを利用するとリスクが軽減されます。
ミドルレイヤーは保温性が高いので熱量をたくわえて充分にカイロの暖かさを感じることができます。
一酸化炭素中毒リスクへの対策も行おう
キャンプギアの各メーカーは基本的にテント内での燃焼器具などの火器使用を禁止しています。
これは一酸化炭素中毒の危険性があるためです。
ですが寒さのあまり使ってしまう人も数多くいるのが現状です。
海外のアウトドア用品メーカーなどは薪ストーブの使用を推奨するテントを販売してるメーカーもあります。
ですが本質的に一酸化炭素中毒の危険性には変わりがないことを理解しましょう。
テント内で一般的に活用されている薪ストーブ・ガス缶ストーブ・石油ストーブや種類に関わらず火器を使用する場合一酸化炭素中毒のリスクに必ず注意しましょう。
一酸化炭素チェッカーを必ず使用して、機器が反応した場合は即座に熱源を消し換気しましょう。
一酸化炭素が発生する暖房機器を使用する場合、必ず就寝前に消す、こまめに喚起するなどの対策が大切です。
一酸化炭素チェッカーを使用している場合も、就寝時はストーブなど消しましょう。
一酸化炭素中毒による大半の死亡事故は就寝時に起きています。
寒さに弱いアイテムの使用は避けよう
最近普及してきているポータブル電源は構造的に寒さに弱いことはあまり知られていません。
充電式バッテリーは寒冷地だと電力の消耗が激しく、バッテリーを使用するスマートフォン、モバイルバッテリーも寒い環境だと急激にバッテリーが消費されます。
一見問題なく使用できるように見えるガスバーナーも、厳寒期は長時間使用できなかったり火力が弱くなったりします。
ガス製品もガスが寒冷地では気化しにくくなるドロップダウンという現象で充分な性能を発揮できなくなります。
ガス製品は寒冷地用のガスを使用したガス缶や寒冷地でも使用できるガスライターなどがあるので寒冷地に適した製品を使用しましょう。
テント内でもマイナス温度になるような環境では、朝起きた時にガスバーナー本体が凍り付いていてすぐ使用できない場合もあります。
夜就寝前に何か断熱性のある袋の中に入れて保管しておくことで凍結をさけることができます。
スマートフォンなどのバッテリー製品は起きている間はポケットの中に、夜寝る時は寝袋の中にいれておくことでバッテリーの消耗を防ぐことができます。
ヘッドライトも装着したまま活動するのではなく、使わない時はポケットにいれておくと安心です。
ペットボトルや水分も当然凍結に弱いので寒冷地では大容量の保温ボトルなどで飲み水を管理したり、クーラーボックスにいれるなどの対策をしましょう。
クーラーボックスは夏でも冬でも暑さと寒さから食品を守ることができます。
まとめ
今回は冬キャンプの危険性やリスク、その対処法について道具選びから解説いたしました。
一般的なキャンプの楽しみ方になった冬キャンプですが、楽しむためには準備が大事なことがおわかりいただけたかと思います。
ですがしっかり備えをすれば、最高の体験ができるのも冬キャンプの魅力です。
基本を守り、リスクを回避して楽しい冬キャンプを楽しみましょう。