田舎の両親が山を持っているという方は意外と多いものです。相続放棄や寄付をして山を引き継がない方がいる一方で、親類や兄弟と分け合うかたちで相続することになった方もいるはずです。
今回は実際に山を相続した方、あるいはこれから山を相続しようとしている方を対象に、山を保有していれば必ず発生する固定資産税の計算方法やそれがゼロになる条件、相続した土地を積極的に活用していくためのヒントをお伝えしていきます。
固定資産税の地目から見る山林の定義はこの条件
初めにあまり耳にしない「地目(ちもく)」という言葉について確認しておきましょう。
地目とは「土地の用途」を示すものです。不動産登記を見たことがある方であれば、地目の項目に「宅地」と書かれているのをご存じかもしれません。
この地目ですが、不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)という法律の九十九条で、23種類が示されています。
第九十九条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018_20210401_503M60000010014)
肝心の山林は、国税庁のホームページでは「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義されています。「耕作の方法によらないで」、つまり人間の手が加わっていない状態で竹木が生育している土地を指すわけです。
では「植付や草刈りで人の手が加わっている山の地目は山林じゃないのか」という疑問が出てくるかもしれません。確かに法律の条文を素直に読むとその通りなのですが、客観的に観察して山林だろうと思われる土地は山林と思っていただいて大丈夫です。これは現況優先という考えがあるためです。
逆に言えば現況優先であるため、住宅が建っている場合は書類上山林と分類されているにも関わらず、固定資産税は宅地として課税されている場合もあります。
地目が山林であるメリット・デメリット
地目が山林であるメリットは以下の2つです。
- 固定資産税が安い…住宅街に隣接していると高くなることもありますが、元々の評価額が低いためです。
- 基礎工事が不要な建物(小屋やツリーハウス)なら建てられる…自分の土地に、自分のお気に入りの建物を建てることができます。
逆にデメリットは以下の2つです。
- 山地のため利活用が難しい…住宅等建造物を建てようとした際に建築費用や維持費用が高くなりやすいためです。
また、種々の法律によってそもそも利活用に制限がかけられている可能性があります。以下はその一例である、森林法の条文です。
第十条の二 地域森林計画の対象となつている民有林において開発行為をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可を受けなければならない。(一部抜粋)(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000249)
- 売却が難しい…上記のような理由により、なかなか買い手がつかない現状があります。
山林の固定資産税の相場はいくら?
山林を保有していると固定資産税が発生します。以下が固定資産税の計算式です。
評価額(固定資産評価基準により算出)×1.4%=課税額
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html より)
例えばAさんが1ヘクタールで100万円の土地を持っていたとします。すると、Aさんへの課税額は1,000,000円×1.4%=14,000円となります。
この「評価額」という表現が曲者です。評価の視点として、山は住宅地に近いか、傾斜はどの程度か、地質はどうか、林産物の搬出はしやすいか、といったものがあり、土地に応じて千差万別です。もちろん面積との兼ね合いもありますから、固定資産税の相場を一概に言い表すことはできません。
土地の評価額は、以下の3種類の方法で確認することができます。
1.固定資産税の課税明細書で確認する
固定資産税の納税通知書が4月上旬ごろに届きますが、それと一緒に送られてくる課税明細書に固定資産税評価額が記載されています。
2.固定資産課税台帳を閲覧する
市町村は、課税対象を管理するために固定資産課税台帳を作成しています。それを閲覧すれば固定資産税の評価額を市町村の窓口で見ることができます。納税義務者やその家族、委託を受けた代理人など全員が見られるわけではないところに注意が必要です。
3.固定資産評価証明書を取得する
閲覧は窓口のみですが、証明書の取得は郵送でも行えます。各自治体によってルールが異なりますので、詳しくは自治体のホームページなどを参考にしてください。
固定資産税がかからない条件とは
固定資産税がかからない山林も存在します。理由は以下のとおりです。
1.課税額が免税点以下である場合
土地には免税点というものが設定されています。山林の場合は課税額が30万円以下であれば納税の義務が発生しないのです。「土地を持っているのに納税した覚えがない」という方はこの条件に当てはまっているのではないでしょうか。
ただし、周辺の土地が開発された(純山林から市街地山林へ変化した)場合や、山林に住宅を建てた(地目が山林から宅地に変化した)場合は評価額が跳ね上がる可能性があります。つまり、今は課税の対象でなくても将来的に課税対象になる可能性もあるということです。
2.山林が「保安林」である場合
林野庁のホームページに保安林の定義が記載されています。
水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。
この定義からもわかるように、保安林に指定されていると土地の利活用に制限がかかります。課税対象にならない代わりに好きに使うことができなくなるということです。
補足になりますが、都道府県の職員の調査を受ければ、個人のレベルで地目を山林から保安林に変更することもできます。保安林としての機能が期待できればという条件付きになりますので、確実に変更できるわけではないという点は覚えておく必要があるでしょう。
固定資産税がかかるのであれば、放置ではなく活用しましょう
山林を相続した際のイメージが少しはできたのではないかと思います。
相続放棄や寄付をすれば税金の問題は考えなくてよいのですが、昔からある土地を手放したくない方も多いはず。
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