所有している、あるいは購入を検討している山林の地目を見ると、「保安林」と記載されていることがあります。
- 保安林とは?普通の山林とは違うの?
- 保安林を所有するメリットはある?
- 保安林を売買するときの注意点とは
今回は、上記3つの視点から、保安林の特徴や管理・売買に関する注意点を紹介します。
普通山林と保安林って何が違うの?
山林の中には、保安林に指定されているところもあります。
保安林とは、以下の目的のために、農林水産大臣や都道府県知事が指定した森林のことです。
- 土砂災害防止
- 水源涵養(かんよう)機能の維持
- 生活環境の保全・形成など
ちなみに水源涵養機能とは、森林など自然が水資源を蓄え、養い育てていくはたらきです。
保安林の管理は国や地方自治体が行うのではなく、基本的に所有者が行わなくてはなりません。
また、指定施業要件で定められている行動制限や規制(無許可の伐採禁止など)がある点も、注意すべきポイントです。
仮に無許可で立木の伐採などを行うと、自分の山林であっても森林法違反となり、処罰されてしまいます。
一方、普通山林(普通林)は、保安林のような法令による制限がない山林全般をさす言葉です。
自分が所有する、あるいは相続予定の山林が保安林に指定されているかどうかは、林業事務所に書面で照会を依頼しましょう。
地目が「山林」であっても変更手続きが忘れられているだけで、実際は保安林に指定されていたというケースもあります。
保安林で気になることを調べました
保安林はさまざまな地域にあります。
何も知らずに相続した山林が、保安林に指定されていたとなれば、取り扱い方法に十分注意しなくてはなりません。
そこで、保安林の所有者や相続予定の方が気になることについて、答えや押さえておきたい情報を紹介します。
保安林って何種類あるの?
保安林は全部で17種類あり、指定目的にもとづいて分類されています。
たとえば水源涵養機能の維持や、近隣生物の生息・繁殖を助けるなど、自然保護に関連する保安林は、以下の種類があります。
- 水源涵養保安林
- 魚つき保安林
土砂災害など自然災害の防止や、森林があることで人々の生活を守ることにつながる保安林として、以下の種類があげられます。
- 土砂流出防備保安林
- 飛砂防備保安林
- 防風保安林
- 潮害防備保安林
- 干害防備保安林 など
土砂災害のように山林で起こりやすい災害を防ぐだけではなく、海岸の潮害や飛砂による被害、洪水や渇水による災害や生活への影響などを防ぐ目的の保安林も含まれます。
他にもレクリエーションなどの教育、保健に役立てるための保健保安林、目印とすることで航行の安全をはかる航行目標保安林、景色としての価値が評価された風致保安林などもあります。
ここで紹介した種類以外にもさまざまな保安林が存在するため、「うちの山は土砂崩れの心配はないから、普通山林だな」と安易に考えず、一度地目を確認してみてはいかがでしょうか。
保安林は税金が優遇される?
保安林は無許可で立木の伐採ができないなど規制もありますが、必ずしもデメリットばかりとは言えません。
たとえば、普通山林に比べると税金の面でメリットがあります。
もともと山林の固定資産税は安く、数千円~数万円程度で済むケースが一般的ですが、保安林となると非課税となり、固定資産税がそもそも課せられません。
地域によっては、課税標準額が30万円に満たない額であれば、普通山林も固定資産税は発生しませんが、地域問わず非課税となるのは保安林のメリットと言えます。
課税標準額とは、固定資産税を算出するときの基準となる金額です。
特例措置など一部の例を除くと、山林の評価額と同額であり、1坪あたりの評価額×山林の面積で計算できます。
固定資産税の他、保安林は不動産取得税や特別土地保有税も非課税です。
更に相続税や贈与税の控除(3~8割)、造林補助金や公庫融資における優遇など、さまざまなメリットが得られます。
他にも設けられている制限や保安林指定の目的によって、立木資産の損失補填や全額公費負担による治山事業などが行われることもあります。
保安林は売買して問題ない?
保安林の所有に関しては管理義務など厳しい制限が設けられていることもありますが、売買すること自体は問題ありません。
売却に関してなんらかの手続きを踏む必要もなく、普通山林と同じように、第三者が保安林の所有者から直接購入することも可能です。
購入する場合の注意点は、保安林は森林以外の用途に転用できないことです。
たとえばログハウスなどを建てて住んだり、セカンドハウスとして利用したりする目的で山林を購入したいのであれば、保安林は避けましょう。
一方、保安林でも休憩用の簡易的な小屋や倉庫程度の設備であれば、設置できる場合があります。
保安林を売買するときは、買主側が保安林の特徴や制限を理解しているか、規制に触れない用途での利用を想定しているかを確認しましょう。
また普通山林と同じように、保安林の売買後は、買主側が森林法に基づいた届出を行うことも忘れてはなりません。
保安林は貸し出して問題ない?
保安林に指定された場合、設けられる制限は以下の3つです。
- 立木の伐採は都道府県知事の許可を得ること
- 土地の形質の変更は都道府県知事の許可を得ること
- 伐採跡地には指定施業要件に従い、植栽をすること
林野庁によると、ここであげる伐採や土地の形質の変更には、以下の内容を含んでいます。
- 立木の損傷
- 家畜の放牧
- 下草や落葉、落枝などの採取
- 土石や樹根の採掘
- 開墾など土地の形質の変更
たとえば自然そのままの状態を楽しめるサバイバルゲーム用のフィールドとして貸し出すと、ゲーム中に立木を傷つけてしまうリスクがあります。
意図的に伐採することがなくても、結果的に立木の損傷など保安林の状態維持に影響を与えるため、このような目的での貸し出しは困難です。
ただし見方を変えると、上記の制限に触れない方法であれば、保安林であっても第三者に貸し出して収益を得ることができます。
保安林もうまく活用して、収益化していきましょう
保安林は制限がありますが、あらかじめ設けられたルールさえ守れば、普通山林と同じように自由に利用できます。
少しでも保安林を収益化したいのであれば、制限に注意しつつ貸し出せる方法を選びましょう。
たとえば多少開けた場所がある保安林なら、野営地として貸し出す方法があります。
ただし貸し出した相手が制限に触れるような行動を行わないよう、事前にしっかりと認識をすり合わせておくことが大切です。
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